亜鉛の欠乏は味覚障害を起こすことはよく知られているが、皮膚の障害や傷の治りの遅れ、脱毛などにも関わっている場合があるので、亜鉛補給の薬は皮膚科でも度々処方される。
長い間、保険適応で亜鉛の薬というものはなく、代用として、亜鉛欠乏症にはプロマックが処方されることが多かった。
そして、プロマックでも改善が見られない場合、ノベルジンが処方される。
(ウチの近隣の皮膚科さんでは)
ノベルジンは元々、ウィルソン病(肝レンズ核変性症)という病気の治療薬だ。
ウィルソン病というのは、体の中に銅が蓄積されてしまう病気だ。
肝細胞が銅を排出する輸送タンパク(ATP7B)に異常が起こって発症する。
体内では亜鉛と銅の輸送体は共通しているので、銅の吸収を抑えるために、より多くの亜鉛を投入して、銅の吸収を抑える。それがノベルジンの作用機序。
(2017年から、ノベルジンは亜鉛欠乏症にも保険適応になった。)
【用法】
亜鉛は体内への吸収があまりよくなく、食事の影響も受けるので、ウィルソン病の場合は空腹時に服用とされる。
一方で、亜鉛欠乏症の場合は、悪心、胃腸障害などの副作用の予防を優先して、食後服用となっている。
【亜鉛の食事摂取推奨量】
健康な人の場合、亜鉛の食事摂取推奨量は、成人男性で10mg/日、女性で8mg/ 日。
上限量が成人男性で40mg/日、女性で35mg/日。
亜鉛欠乏症の場合、ノベルジンは1日量が100mg(50mg錠を1日2回服用)だから、かなり多めの亜鉛を摂取することになるんだなー。
【排泄経路】
排泄はほとんどが糞便中。
【副作用】
ノベルジンが効きすぎて、亜鉛が増えすぎた場合、どういう副作用が考えられるかというと、まず悪心。
(多すぎても少なすぎても気持ち悪くなる(^◇^;))
血清アミラーゼ、リパーゼの上昇も見られる。
亜鉛が多すぎるということは、銅が不足してくるということも考えられる。
銅は、鉄がヘモグロビンに結びつくのを助けているから、銅が不足すると貧血も考えられる。
体内には亜鉛は2〜4g存在しているのに対し、銅は80mgとかなり少ない量で大丈夫なんだけど、亜鉛が大量に取り込まれた場合は銅の吸収が阻害されて、銅欠乏症も起きるかもしれない(推測)。
【検査値】
血清亜鉛値が
60μg/dL 未満…亜鉛欠乏症
ノベルジン投与時は、
血清亜鉛値が200 μg/dL以上、
血清銅が20〜30 μg/dL以下
になった場合は、銅欠乏症に注意する必要がある。