初の脇汗の外用薬、エクロック。

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エクロックゲル(科研)は、保険薬では初の原発腋窩多汗症治療の外用薬。

緊張したから、とか暑いから、という理由で脇汗がでるのとは違い、常に脇汗が多いという症状に対する治療薬。

抗コリン薬。エクリン汗腺のM3(ムスカリン受容体サブタイプ3)に結合してアセチルコリンの結合を阻害し、発汗作用を抑えるという作用機序。

抗コリン薬なので、外用だが、閉塞隅角緑内障前立腺肥大には禁忌となっている。

アプリケーターに薬液を乗せてそれで脇の下に塗るので、直接触らなくてもすむ、という工夫がされている。

1日1回、1本で14日分。

アトピー性皮膚炎の新薬、オルミエント。

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JAK阻害剤



オルミエントはすでに、リウマチ治療薬として使われていたが、2020年の12月に、アトピー治療薬としても認められた。

デュピクセントなどの免疫抑制剤の使用に慣れている皮膚科でしか処方できない。

 

 

オルミエントはコレクチム軟膏と同じくJAK 阻害剤という種類の薬。

Th2から放出されるサイトカインの放出を抑え、炎症を抑える。

 

驚くのが薬価で、15000円以上(*⁰⁰*)

最近の薬は高額なものが多く、街の薬局では在庫は厳しくなっていく一方。

患者さんと国の保険の負担も重くなっていく一方だ。

メーカーさん、本当にもう少し安くできないのー?(T_T)

 

 

 

さて、オルミエントは内服薬で、111錠(4mg)の薬。

食事の影響は少なく、いつ飲んでも良い。

Tmaxは1時間以内、24時間でほぼ消失。

代謝経路は腎排泄なので、腎機能障害がある場合、程度に応じて減量する。

併用注意はプロベネシド(ベネシッド)のみ。

使いやすそう。

 

 

アトピー性皮膚炎の治療薬として承認されたのは最近だが、リウマチ薬としては2017年から使用されているため、新薬としての日数のしばりはない。

8週間をめどに効果判定。

 

根本治療の薬ではないので、症状が軽減しても服薬を中止すると元に戻ってしまう。様子を見ながら減量する感じかな。

 

薬自体が免疫反応を落とすものであるため、感染症にかかりやすくなるという副作用がある。

特にリウマチの持病がある患者さんには、帯状疱疹が起こる確率が高くなるそうだ。

その治療に腎排泄型のバラシクロビル(バルトレックス)やファムシクロビル(ファムビル)を使っても(オルミネントと併用しても)問題ないとメーカーさんは話していた。

 

製剤的には、原則的には半錠に割れない薬。

減量になった場合、2mgを新たに仕入れなければならないのだー(T_T)

 

 

この薬も高額医療費の対象となりそうだ。

30日分10割で大体15万円くらいかかる。

今申請中のアルツハイマーの薬は1年で1800万円くらいかかるそうだから、それに比べればだいぶ安いかー。感覚がおかしくなってきた(^^;)

 

 

そう思うと、コレクチム軟膏にはがんばってほしい。1600円台!(^○^)

 

https://www.mhlw.go.jp/content/000333279.pdf

 

 

 

 

 

 

 

 

↓高額療養費が大体見当がつくサイト(^○^)。

rheuma.jp

 

亜鉛欠乏症の薬、ノベルジン。

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亜鉛欠乏症の薬。

 

亜鉛の欠乏は味覚障害を起こすことはよく知られているが、皮膚の障害や傷の治りの遅れ、脱毛などにも関わっている場合があるので、亜鉛補給の薬は皮膚科でも度々処方される。

 

長い間、保険適応で亜鉛の薬というものはなく、代用として、亜鉛欠乏症にはプロマックが処方されることが多かった。

そして、プロマックでも改善が見られない場合、ノベルジンが処方される。

(ウチの近隣の皮膚科さんでは)

 

 

ノベルジンは元々、ウィルソン病(肝レンズ核変性症)という病気の治療薬だ。

 

ウィルソン病というのは、体の中に銅が蓄積されてしまう病気だ。

肝細胞が銅を排出する輸送タンパク(ATP7B)に異常が起こって発症する。

 

体内では亜鉛と銅の輸送体は共通しているので、銅の吸収を抑えるために、より多くの亜鉛を投入して、銅の吸収を抑える。それがノベルジンの作用機序。

つまり亜鉛の薬なので、亜鉛欠乏症にも使える。

2017年から、ノベルジンは亜鉛欠乏症にも保険適応になった。)

 

 

【用法】

亜鉛は体内への吸収があまりよくなく、食事の影響も受けるので、ウィルソン病の場合は空腹時に服用とされる。

一方で、亜鉛欠乏症の場合は、悪心、胃腸障害などの副作用の予防を優先して、食後服用となっている。

 

 

亜鉛の食事摂取推奨量】

健康な人の場合、亜鉛の食事摂取推奨量は、成人男性で10mg/日、女性で8mg/ 日。

上限量が成人男性で40mg/日、女性で35mg/日。

亜鉛欠乏症の場合、ノベルジンは1日量が100mg(50mg錠を1日2回服用)だから、かなり多めの亜鉛を摂取することになるんだなー。

 

【排泄経路】

排泄はほとんどが糞便中。

 

 

【副作用】

ノベルジンが効きすぎて、亜鉛が増えすぎた場合、どういう副作用が考えられるかというと、まず悪心。

(多すぎても少なすぎても気持ち悪くなる(^^;)

血清アミラーゼ、リパーゼの上昇も見られる。

 

 

亜鉛が多すぎるということは、銅が不足してくるということも考えられる。

銅は、鉄がヘモグロビンに結びつくのを助けているから、銅が不足すると貧血も考えられる。

体内には亜鉛24g存在しているのに対し、銅は80mgとかなり少ない量で大丈夫なんだけど、亜鉛が大量に取り込まれた場合は銅の吸収が阻害されて、銅欠乏症も起きるかもしれない(推測)。

 

 

【検査値】

血清亜鉛値が

 

60μg/dL 未満亜鉛欠乏症

 

6080μg/dL未満潜在的亜鉛欠乏

 

 

ノベルジン投与時は、

血清亜鉛値が200 μg/dL以上、

血清銅が2030 μg/dL以下

になった場合は、銅欠乏症に注意する必要がある。

 

 

【アンサングシンデレラ6話】①抗生物質の適性使用について

患者さんの求めに応じて、必要のない抗生物質を漫然と処方する、という開業医は現実にはかなり減っていると思う。

それは、数年前から厚生省が耐性菌について危機感を抱き始め、抗生物質の適正使用について厳しく指導し始めたことが大きな原因だと思う。

小児の場合は抗生物質を減らした場合(患者さんに説明して)、診療報酬も上乗せされることになった。

知り合いの歯医者さんも、「使える抗生物質と日数を厳しく制限されるようになってきた」と言っていた。

耐性菌というものが、一般の人にも知れ渡ってきたので、長期に抗生物質を飲みたがる患者さんも少なくなってきたと思う。

 

しかし、ドラマのように独特な信念を持つ患者さんもいる。とにかく自分の考えに固執して、聞く耳持たない。

先生も仕方なく処方する、ということもあると思う。

ただ、抗生物質はそんな長期には出さないだろう。

ドラマの患者さんの場合、先生に対する信頼は厚かったし、ただ薬が欲しいだけだったので、抗生物質ではなく、先生がうまく説明して、症状を抑える薬だけ出せばよかったと思う。まあそれだとドラマにならないけど(^○^)

 

私が受けた処方では、長期に抗生物質を出されたケースは2つある。

ひとつは、難治性の慢性副鼻腔炎に、少量でマクロライド系の抗生物質3〜4ヶ月ほど処方されるケース。

もうひとつは、難治性のニキビに漸減でテトラサイクリン系の抗生物質12ヶ月処方されるケース。

どちらも抗菌作用ではなく、抗炎症作用を期待して処方される。

 

追記:薬剤性腸炎は、特に長期に抗生物質を服用していなくても発症することがあるそうです。

www.saitama-clinic.com

https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000573655.pdf

https://www.mhlw.go./content/10900000/000573655.pdf

 

 

www.kansensho.or.jp

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【アンサングシンデレラ5話】終末期の患者さんとの関係。

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最近はクオリティオブライフ、ということが言われてきていて、必ずしも延命治療をするわけではなく、患者さんやご家族の希望に合わせて、緩和療法のみ、という方針をとることがある。

病気で入院してきたからには治療したいのが医療スタッフな訳で、積極的な治療を中止するのは無力感に苛まれる。負けたような気がする。

 

あなたたちに任せます、といわれた患者さんと家族も、それはそれで難しい。

仲の良いほど、家族は延命治療をしてもらいたいし、患者さんは本当は苦しいのでもう痛みを取るだけでいい、勘弁して欲しいとさえと思っているのに、家族のために、と苦しい抗がん剤放射線治療をがんばったりする。

家族同士のお互いの思いやりと、医療スタッフの治療したい気持ちが一致して、苦しい治療を続ける患者さんもけっこう多い気がする。

患者さんが最後にどのようにすごすかを決める権利(と、もしかしたら義務)は、患者さん自身にあるはずだけど、患者さんは自分のことより家族や医療者の気持ちを思って最後まで苦しい治療を続ける、というのも切ない。

 

患者さんが緩和療法を選び、自宅に帰ることを望んだとしても、それを引き受ける覚悟と時間が家族側にあるか、という問題もあるし、地域にきちんとそれをケアできる医師や薬剤師がいるかというと、あまり多くないのが現状だろう。

本当に終末期の治療は難しいと思う。

 

でも、葵さんのような病院があれば本当に素晴らしいけど、正直言って現実感がなさすぎる。まだまだ未熟だけれど、一番患者さんに寄り添う可能性があるのは、やはり在宅治療の方だと思う。

 

実際、病院は急性期が終わると、その後の経過にほとんど関わることはない(私の経験では)次に関わるのは、また病状が悪化した時だけだ。

 

在宅を回ってますという医師でも、数をこなさないと経営に響くのか、私が経験した中では、一人一人の患者さんや家族の話をじっくり聞いて考えてくれるような医師はあまりいなかった。

ただ、在宅にはいろいろな職種が関与する。ナース、薬剤師、ヘルパーさん、ケアマネさん。時には民生委員さんやボランティアさんも。その中には患者さんと相性の良い人もいて、いろいろ話せる場合もある。まあ結局医師が話を聞いてくれなければ直接治療にはつながらないんだけど。寄り添うという意味では病院よりは可能性は大きい。

 

 

このドラマを見て思うのは、結局医療者の人間性が大きく物をいう場合もあるんだな、ということだ。

それは病気を身体的に治すには関係ないところだが、治療が思うようにいかなかった時、患者や家族を精神的に救うのに大きな役割を果たすことがある。

母が亡くなったとき、個人的にも経験したことあるが(それはナースだったが)特にお礼を言う機会もなく、病院を後にした。でもその時の救われた感じはいつまでも忘れず、感謝している。

でももしかしたら病院的にはテキパキしてない、効率の悪いダメな看護師さん、という評価なのかもしれないなあ(^^;)

 

人間性が豊かだ、ということと感情的なのはまた全然違う!

動揺しやすいのもまた医療者失格なのだ。

私はといえば、薬剤師にあるまじきことに、難病の患者さんと話すとすぐ泣いてしまうし、技術は未熟だし、本当にダメだなーしろうとだなーと激しく落ち込みつつ奮闘している毎日なのだったσ^_^;

 

なんかまたとりとめがなくなってしまった(^^;)

 

 

がん患者さんの在宅治療で有名な先生。

薬剤師の講習会で緩和療法の講演を聞くたびにひとり号泣してしまうしろうと丸出しの私(T_T)

 

https://www.naito-izumi.net/profile

【アンサングシンデレラ4話】②医者になりたい薬剤師。

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医師と薬剤師の身分の差は大きい。

薬剤師は薬に関しては医師より詳しいと言いながら、薬の裁量権はないし、収入も段違い(^○^)。医師は責任も大きくて大変だと思うが、最近は、薬剤師の責任も問われることが多くなってきた。

 

私が薬学部に入った当時は、

「医学部ダメそうだから薬学部受けた」

と複雑な表情で語る学生は何人かいた。

あきらめきれずに、入学してからすぐ薬学部を辞めて医学部を受け直した人もいれば、卒業してから受け直した人もいる。

でも当時は薬剤師志望の人より、製薬の研究者志望の人が圧倒的に多かった。

(これは大学により傾向が違っていたのかもしれないが)

 

 

薬剤師になってから、悔しいようなもどかしいような思いをしたことのある人は多いと思う。

それは例えば、こんな感じ。

 

・おじいさんの先生で、もっといい薬がたくさんあるのに、今ではあまり使われていないような副作用の多い薬に執着している。

 

・すぐ飲まなければいけない薬だけどすぐ手配できないので、ほぼ同じ薬効の薬を提案しても、さしたる理由もなく変更を認めてくれない。

 

・副作用が疑われるので確認すると、薬剤師になにがわかる!と聞く耳持たない。

 

・在宅の人数が増えすぎて、自分の薬局のキャパでは深夜までやっても終わらないので、それ以上は無理だということを伝えると、怒っていきなり今までの在宅の患者も全部引き払う。

 

 

など、やっぱり医者は絶対権力を持っている。

もちろん(最近は特に)そんな先生は少ないが、そういった経験は印象深いので、強く残ってしまう。

結局関わる先生次第というのが頼りない。

そんな先生に当たった経験はどの薬剤師にもあるのか、話を聞くと薬剤師の子供はけっこうな確率で医学部に入っている。子供も薬剤師という人は少ない気がする。

リベンジ?(^○^)

 

 

【アンサングシンデレラ4話】①薬剤師の存在意義とは?

 

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最近時々思う。

AIが発達したら、知識では太刀打ちできない。膨大な薬品名、相互作用、副作用などのデータを一瞬で正確に判断するAI。発表された論文もすべてアタマに入っているし!

なんなら、調剤だって工場のようにオートメーション化した方が速くて正確だろう。

 

薬剤師の存在意義ってなんだろう。

 

今回の話では、薬の副作用を調べるために葵さんと後輩が徹夜で論文を調べて、痴呆症状の原因を突き止める。

でも普通は、大きい病院だったらいくつかのデータベースにアクセスできるだろう。

キーワードで比較的簡単に検索できるので、そんなに時間はかからないと思う。

さらに言えば、医療者でなくても今はかなり専門的なことまで普通にネットで調べられる。

でもそれではドラマにならないのだ(^○^)

 

将来的に人間の薬剤師(^○^)が機械に勝るところはどこだろう、と考えると、それは直接人と触れ合う場面とか、経験知のようなかっきり文章にできないもの、だけかもしれないな、と想像する。不安に思うところを汲んで話をよく聞く。医師との仲介役になる。とか、在宅のように、患者さんの家に行って一人一人に合わせた投薬をする。飲みやすい工夫をする。あとは、ひと並びになっている情報の重要度を、経験に照らし合わせてランクづけする、ということもAIには負けん!と思うんだけど。

 

その意味では、将来も活躍するのは、早くて正確な調剤を誇る刈谷さんより、お節介やの葵さんなのかもしれない(^○^)

 

 

文献検索といえばこれ↓最近は日本語で検索できるのもあるらしい。

 

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed.ncbi.nlm.nih.go