【アンサンクシンデレラ2話】 ③ロペミンで意識不明に!

自分の中では薬のランク付けみたいなものがある。

つまり、危険な薬と、大したことのない薬(^O^)

副作用が多かったり、併用薬で気をつけなければならない薬、

そういった薬はより気をつけてチェックしているつもりでいた。

 

そんな私のなかでは、ロペミンはただの下痢の薬(^○^)

気をつけることといえば、食中毒など感染性の下痢には使わない方がいい、くらいな流し方だった(^^;)

それが、ロペミンの大量投与で、意識不明になるとは!

そういえば、ロペミンについて深く考えることはなかった。

新しい薬だと薬理作用を含めた資料は豊富だが、昔からある薬はなんとなく使っていることが多い。薬理作用や基礎、臨床データもそんなに詳しくないことが多い。

昔から使ってて、まあ安全だし、歴史があるから大丈夫でしょ、て感じ?(^○^)

漢方もそんな感じで緩かったが、最近は薬理機序など研究されるようになってきた。

 

 

で、改めてロペミンについて調べてみた。

 

 

【作用部位・作用機序】

作用部位:腸管の神経叢 作用機序:ロペラミド塩酸塩は腸壁内コリン作動性ニューロン機能を抑制し、また、腸管の輪状筋方向の伸展により誘発されるアセチルコリンとプロスタグランジンの放出を抑制する。

 

うんうん。

 

【開発の由来】

opiummorphine 及び codeine などの作用の強い止瀉剤は、特に長期間使用した場合、中枢作用に由来する依存性を生ずる 可能性があり、その使用には限界があった。このため、Janssen 社では、腸管に対する作用と中枢に 対する作用が分離された止瀉剤を開発し、その結果、1969 年にロペラミド塩酸塩を合し、1973 年にベルギーで発売された。

ロペラミド塩酸塩は morphinecodeinediphenoxylate*よりも強力、かつ持続的な止瀉作用を示 す一方、それらの薬剤とは異なり、非毒性用量では中枢作用を示さず、止瀉作用と中枢作用がよく分 離された特性を示す。

 

 

 

 

なんと、開発の歴史は、もともと下痢止めにモルヒネコデインを使っていたところ、依存性など副作用が多いので作った非麻薬性アヘン様化合物というではないか!

アヘンの仲間?

なので、やはりオピオイド受容体に作用する。ただし、腸管に作用し、中枢には作用しにくい特徴を持つ。

そうは言っても、それは常用量の話。

 

 

 

【過 与】

    徴候、症状:外国で、過量投与により昏睡、呼吸抑制、縮瞳、協調異常、筋緊張低下、傾眠、尿 閉等の中毒症状が報告されている。また、腸管壊死に至る麻痺性イレウスにより死亡に至った例、 QT 延長、Torsade de Pointes を含む重篤心室不整脈Brugada 症候群の顕在化が報告されてい る。 処置:中毒症状がみられた場合にはナロキソン塩酸塩を投与する。本剤の作用持続性に比べ、ナ ロキソン塩酸塩の作用は短時間しか持続しないので、必要な場合にはナロキソン塩酸塩を反復投 与する。また、QT 延長のリスクがあるため、心電図異常に注意すること。

 

 

やはり、過量投与すると、中枢作用も現れる。

オピオイド受容体に作用するので、中毒の治療も麻薬中毒の治療と同じナロキソンも効き目がある。

過量とはどれくらいか不明だが、副作用に対する潜在能力を調べる実験では、健康人に 1 60mg まで投与したが、重大な副作用は起こらなかったそうだ。

 

 

【中毒時における処置方法】

臨床試験で、ロペラミド塩酸塩の内服直後に活性炭を投与したところ、体循環中に吸収される薬物量は 1/9 に減少したとの報告がある。

 

・嘔吐が自発的に起きたときは、活性炭 100g を胃内の液体 が保持できるうちに直ちに内服させる。もし嘔吐が起こらなければ、胃洗浄を行ったのち、活性炭 100g を胃チューブにより強制投与する。

 

・過量服用が起こった場合には、少なくとも 24 時間は中枢神経系の抑制がみられないか、モニター すべきである。小児は成人よりも中枢への影響の感受性が大きいかもしれない。

 

・もし中枢神経系の 抑制がみられたら、ナロキソン(麻薬拮抗薬)を投与する。もし、ナロキソンに反応したら、ナロ キソンの最終投薬から少なくとも 24 時間は過量服用の再発がないか、vital sign をモニターする。 ロペラミドの作用の持続性とナロキソンの作用の短時間性(1 ~ 3 時間)を考えて、患者を厳重に監視し、必要な場合にはナロキソンを反復投与する。

・尿には比較的少ししか排泄されないので、強制利尿はあまり有効ではない。

 

 

麻薬といえば依存性も知りたいところだが、

サルの実験では人の常用量の100倍〜200倍(1100200錠!)で身体依存が出たというから、まず現実的には心配ないといえる。

 

 

サルにロペラミドのきわめて非実際的な大量(常用量の約 100 ~ 200 )を皮下もしくは経口で反 復投与したところ、身体依存の形成が認められた。しかし、ヒトにとってきわめて大量のロペラミド を経口服薬させたときの血中濃度に相当する血中濃度をサルに維持させたが、ナロキソン(麻薬拮抗 )投与及び休薬の際の観察において、身体依存の形成は認めなかった。このことは、ロペラミドの 依存性がヒトに発現される可能性がほとんどないことを予測させるものである。実際、精神科医の指 導のもとで実施された、依存性につながる可能性のある諸反応の観察を目的とした試験の結果、臨床的に依存性を示唆するような症状は観察されなかった。

 

 

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ロペラミド(ロペミン

 

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モルヒネ

 

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コデインリン酸塩

 

他に、オピオイド受容体に作用する消化管の薬は、消化管運動機能改善薬のトリメプチン(セレキノン)がある。

が、過量投与のデータはなく、中枢神経系の副作用も、頭痛、動悸程度。